こんにちは。終末期ケア専門士・訪問看護師の山口です。
これまでに50人以上の方をご自宅で看取らせていただくなかで、私は一つの大切なことに気づきました。
それは、「息苦しさを和らげるケア」は、ご本人にとっての安心と、ご家族にとっての心の支えになるということです。
このブログでは、がんや終末期の痛み(がん性疼痛)に向き合うご本人・ご家族に向けて、在宅でもできる緩和ケアの工夫や、生活の質(QOL)を保つ方法をわかりやすくご紹介しています。
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なぜ息苦しさが起こるの?
終末期に多い「低酸素血症」
終末期(ターミナル期)になると、体の機能が徐々に低下し、「低酸素血症(ていさんそけっしょう)」と呼ばれる状態になることがあります。
これは、体に必要な酸素が十分に取り込めなくなることで、以下のようなつらい症状が現れます:
• 息切れ・呼吸の苦しさ:肺での酸素と二酸化炭素の交換がうまくいかない
• 意識がぼんやりする:脳への酸素供給が不足する
• 不安や落ち着かなさ:呼吸困難からくる心身の不安定さ
これらの症状はご本人にとって大きなストレスであり、ご家族にとっても見守るのがつらい時間です。
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酸素療法(酸素投与)とは?
酸素療法とは、医療用の機器を使って体に酸素を補い、息苦しさや不安感を和らげるケア方法です。
最近では、医師の指導のもと、ご自宅でも安全に酸素療法を行える環境が整ってきています。
在宅での酸素療法は、ご本人が住み慣れた場所で穏やかに過ごすための、大切な選択肢のひとつです。
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ターミナル期(終末期)での酸素療法の目的と効果
酸素療法の主な目的
• 呼吸の苦しさをやわらげる
• 意識のぼんやり感や不安を軽減する
• 心身の安心感を支える
酸素療法による具体的な効果(メリット)
• 息苦しさの軽減
• 呼吸の安定
• 不安・緊張の緩和
• 睡眠の質や日常生活のQOLが向上
• ご家族との会話やふれあいがしやすくなる
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酸素療法のデメリットと注意点
デメリット(気になる点)
• 鼻や口元にチューブをつける違和感
• 酸素のにおいに敏感な方もいる
• チューブが長いため動作の邪魔になることがある
• 会話がしにくいと感じる場合も
注意が必要なリスク:「CO₂ナルコーシス」
酸素を過剰に投与すると、まれに「CO₂ナルコーシス」というリスクが生じることがあります。
これは、体外に二酸化炭素がうまく排出されず、呼吸が浅くなって意識が低下する状態です。なので、酸素の流量は自己判断で変更せず、必ず医師や訪問看護師の指導のもとで行いましょう。
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在宅で酸素療法を行うには?
ご自宅でも酸素療法を受けることが可能です。
医師の処方に基づいて、訪問看護や在宅医療チームが機器の設置・管理や使い方をサポートしているため、ご家族も安心してケアに関わることができます。
具体的なサポート内容
• 酸素濃縮器や酸素ボンベの設置
• 機器の使用方法の説明
• 緊急時対応や日々のモニタリング
• 呼吸状態に応じたアドバイス
初めての方でも安心して始められるよう、サポート体制が整っています。
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最後に|酸素療法は「安心して過ごすためのケア」
酸素療法は、延命のための治療ではなく、「今このときを少しでも楽に、穏やかに過ごす」ための緩和ケアのひとつです。
実際に、酸素療法を取り入れた方からは、
• ご本人の「表情が穏やかになった」
• 「家族と落ち着いて会話できた」
• 「最後の時間を落ち着いて過ごせた」
といった声が多く聞かれます。
ただし、すべての方に酸素療法が必要・有効とは限りません。
導入については、主治医や訪問看護師にご相談くださいね。
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▼次回予告
【呼吸困難】終末期にできる「息苦しさを和らげる日常ケア」《前半》
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【この記事はこんな方におすすめです】
• がん患者さんや終末期を迎えるご本人
• 息苦しさや痛みケアに悩んでいるご家族
• 在宅緩和ケアに関わる医療・介護スタッフの方
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最後まで読んでくださってありがとうございます。
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