終末期(ターミナル)で、QOLを守るための「トータルペイン」の考え方

がん患者やご家族に知ってほしい、痛みとの向き合い方

こんにちは。終末期ケア専門士の山口です。

このブログでは、50人以上の在宅看取りをしてきた経験から、「痛みとは何か」「どう向き合うか」そして「どうケアするか」について、本人・ご家族にもわかりやすくお伝えしていきます。

がん患者の多くが「痛み」とともに生きている。

がん患者の約75%以上が、終末期に何らかの痛みを経験するといわれている。

中には、がんと診断された時点から強い痛みに悩まされている方も少なくい。

そのため、痛みの緩和は終末期ケアにおいて最も重要な課題の一つといえる。

この「痛み」は、治療のつらさだけでなく、心や生活にも大きな影響を与える。

だからこそ、痛みのケアは“生活(命)の質(QOL)”を守るために欠かせないサポート

終末期(ターミナル)で 「トータルペイン」ってなに?

痛みと聞くと、「体のどこかが悪いから」「薬が必要だから」と思いがち。

でも実際は、それだけではない。

痛みには、体のつらさだけでなく

心、生活、そして“生きる意味”に関わる深い苦しみが関係していることがある。

要するに、「からだ・こころ・まわりの環境・気持ちや生き方」すべてが痛みに関係していることがある。(これを“全人的苦痛(トータルペイン)“と呼ぶ)

この考え方は、イギリスのホスピスケアの先駆者、シシリー・ソンダース博士が提唱した「全人的苦痛(トータルペイン)」という概念に基づいている。

以下、トータルペインの4つの具体的な苦痛を説明。

終末期(ターミナル)でのトータルペインの4つの苦しみ

1. 身体的苦痛

・がんそのものの痛み

・抗がん剤の副作用

・体のだるさ、疲れ、息苦しさなど

2. 精神的苦痛

・死への不安や恐怖

・希望を失った気持ち

・治療がうまくいくか分からない不安

3. 社会的苦痛

・家族や職場との関係の変化

・役割を果たせなくなることへのつらさ

・治療費や生活費への経済的な不安

4. スピリチュアルペイン

・「なんのために生きてきたのか」

・後悔や心残り

・心の平安が持てない状態

痛みをやわらげるためには、

薬だけではなく、人としての苦しみ全体に目を向けることが大切。

ご本人にも、ご家族にも知ってほしい。

「痛みをただ我慢する」ことが、

かえって心や体を追い込んでしまうことがある。

まずは、「どういう痛みなのか?」を整理し、

一緒に支えてくれる医療者やケアチームと共有することが大きな一歩になります!

▼次回予告

→ 終末期(ターミナル)で「つらい痛みにどう向き合うか?」

薬以外にもできること、心の支え方、ケアの工夫についてお伝えします。

【こんな方に読んでほしい】

・がんと診断され、痛みを感じている方

・がん治療中のご家族を支えている方

・終末期ケアや緩和ケアに関心のある方

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