こんにちは。終末期ケア専門士・訪問看護師の山口です。
これまで50人以上の方をご自宅で看取らせていただきました。
その経験から強くお伝えしたいのは――
「がんの痛み(がん疼痛)は、オピオイド(医療用麻薬)だけに頼らなくても和らげられる方法がある」ということです。
今回は、オピオイド以外でがん疼痛を緩和する方法として、
「放射線療法」と「神経ブロック」について、わかりやすくお伝えします。
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【放射線療法】骨転移や神経圧迫による痛みに効果的
放射線療法は、骨転移やがん(腫瘍)による神経の圧迫・浸潤が原因の痛みに対して、効果を発揮します。
根治(がんを完全になくす)を目指すのではなく、痛みを和らげること(緩和目的)を目指します。
【放射線治療が適応となるがん性疼痛の主なケース】
• 骨転移による痛み(脊椎、骨盤、大腿骨など)
• 神経への腫瘍の圧迫
• 原発巣やリンパ節の腫大による臓器圧迫(食道、気管、尿管など)
• 出血や潰瘍を伴う腫瘍の疼痛(皮膚転移、頭頸部がんなど)
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【治療の目的と特徴】
• 緩和目的(根治ではなく、痛みを軽減しQOLを改善する)
• 副作用が比較的少ない
• 1回または数回の照射で効果が出ることも多い(特に骨転移)
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【効果】
• 痛みの軽減率:60〜90%
• 効果発現までに数日〜数週間かかる場合あり
• 鎮痛薬との併用で相乗効
注意点
• 生命予後(余命)が2〜4週間以内と予測される場合、十分な効果が得られないこともあります。
【放射線療法の主な副作用】
• だるさ(放射線宿酔)
• 照射部位の皮膚炎(赤み・ただれ)
• のどや消化管の粘膜炎(炎症)
副作用はありますが、治療自体の負担は比較的軽いため、多くの方が受けることが可能です。
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【神経ブロック】痛みの神経に直接アプローチする治療
神経ブロックは、痛みを伝える神経に直接働きかける治療法です。
局所(部分)麻酔薬や神経破壊薬を注射し、神経の働きを一時的または半永久的に止めて痛みを緩和します。
神経ブロックのメリット
• 強い痛みを大きく軽減できる
• オピオイドの使用量を減らせるため、副作用(吐き気・便秘など)も軽減できる
神経ブロックのデメリット
• 施術時に感染リスクがある
• 治療中や治療後に体を安静に保つ必要があり負担となることも
• まれに神経損傷による運動障害や血圧低下が起こる場合がある
神経ブロックができないケース
• 出血しやすい状態(血液が止まりにくい)
• 神経ブロックを行う部位に感染や炎症がある場合
施術は医師がリスクと効果を慎重に判断したうえで実施されます。ご希望の場合は、かかりつけ医や緩和ケアチームにご相談を!
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【まとめ】がん疼痛はオピオイド以外の方法でも緩和できる
がんの痛みは、オピオイドだけに頼る必要はありません。
放射線療法や神経ブロックといった他の選択肢も、痛みの軽減に大きな効果を発揮します。
治療の選択は、がんの進行具合や体調、これからの過ごし方の希望に合わせて、医療チームと一緒に考えることが大切です。
「痛みを我慢しない」ことが、心にも体にもやさしいケアにつながります。
「つらい」と感じたら、ぜひ遠慮せずに、訪問看護師や医療者にご相談してください。
あなた自身、そしてご家族が、少しでも穏やかに過ごせる時間を作るために、サポートできることはたくさんあります。
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▼次回予告
→ 【がん性疼痛に有効な在宅ケア】マッサージ(揉みほぐし)の効果と注意点
【この記事はこんな方におすすめ】
• がん患者さんや痛みでお悩みの方
• 終末期ケア・在宅看護を考えているご家族
• 緩和ケアに関心のある医療関係者の方
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